事例02　『環境を整え生命力を引き出す』

「息が苦しそうで、2～3日が山だって…」
80代のお父様を介護している娘さんと奥様からの電話で、私はご自宅へ向かいました。

苦しさ、辛さの為か、お父様は眉間にしわを寄せ、その辛さを奥様に当てており、奥様は小柄で、体格の良いご主人の看病に疲れているご様子でした。
部屋に入りまず気付いたのが、30度位頭部が上がっているベッドからずり落ち、胸を圧迫されているお姿でした。窓は閉め切られて空気も悪い。
まずはお父様の姿勢を整え、窓の解放と空気をキレイにするアロマを香らせる事にしました。
話を伺っていくと、便秘もあるとの事、息苦しさは『姿勢の悪さ』と『空気』と『便秘』かな…。
呼吸を楽にするアロマオイルを作り、胸をさすり、お腹のマッサージを行い退室しました。

その後、いつもなら奥様を呼びつけてくるはずが、寝息を立ててしばらくお休みになられています。
その間に私は奥様に、ラベンダーとローズで作ったオイルでハンドマッサージをして差し上げました。
奥様は「顔まで温かくなったわ」とほんのりピンク色になったご自分のお顔を見て、「心もお肌もポッ、ポッ、主人に優しく出来そうだわ…」とおっしゃいました。

大柄なご主人はベッドからずり落ちやすく、その為、大柄なご主人の体位を動かせる看護技術の方法を奥様と練習し、また、ベッドの足元にヒモを付ける事で、ご主人もその紐をつかんで姿勢を正してもらったり、さらにその際に腹筋に力を入れてもらう事で便秘の予防になる等、ご家族にお任せ出来る事を考え、お話しさせて頂きました。

その後、優しく紳士的に笑まれるお父様のお姿に、「若い頃はすごいハンサムだったでしょう」と奥様に言うと、「すごくかっこ良くて優しいパパだったの～」と娘さんの誇らしげな表情がとても印象深く残っています。
2か月後、ご家族に見守られお亡くなりになりました。ご冥福をお祈りします。

ご自宅で看取ると覚悟を決めたものの、現実の厳しさにお互いに辛くなってしまわないよう、最後の時を心穏やかに過ごす為のケアの提案をさせて頂きたいと強く思いました。