事例01　『母の最期に繋いだ娘との絆』

彼女との出会いは、私のケアサロンにアロマセラピーを受けにいらしたのが始まりでした。
彼女のお母様は、重い病気で入院されており、『痛みや不安、吐き気がひどい母に、アロマで何か出来ませんか？病院でアロマをして頂く事は出来ませんか？』と聞いてこられました。
何より、自分がアロマセラピーを受けてとても気持ちが楽になり心地良かったので、入院している母にも是非！と思ったそうです。

医師の許可も得られ、私は病院に行きました。
初めてお会いするお母様は、吐き気と痛み、喘息による息苦しさでとてもお辛そうでした。
彼女とはよく連絡を取り合い、色々な質問をしてくれました。

『吐き気が強い時はどんなアロマが良いですか？』
『口の中が荒れているのですが、何か出来ますか？』
『足のむくみにはどんなアロマが良いですか？』
『喘息で辛い時は何かしてあげられる事はありませんか？』

私は看護師の時、病院を前にして何をしていいのか分からず立ちすくむしか出来ないご家族を沢山見てきました。
中には、次第に面会の足が遠のき、何も出来ない自分を責め、後悔を残す人もいらっしゃいました。
しかし、彼女は、口の荒れには抗菌力の強いアロマでマウススプレーを作り、足やお腹、手のマッサージ、床ずれには温かいタオルに血行を良くするアロマを含ませマッサージ、吐き気には母が好きな香りを香らせたり…と、母親が少しでも楽になれる方法はないかと日々考え、行動されていました。

しかし、末期のがんを患っていたお母様は遂にお亡くなりになってしまいました。
彼女からは、「最後まで母のそばにいる事ができて、とても良い時間を過ごす事が出来ました」と連絡を頂きました。

私たちは幼い頃、母にたくさん抱かれ、肌の温もりや温かさを沢山教えてもらいました。
幼い頃は全てが初めての事ばかりで不安でいっぱいの中、母の温もりはそれらを打ち消し、安心感をもたらしてくれていました。

ずっと見ていてくれていた母の最期に、娘として母のそばですっと肌をさすってあげられた事は、病気による苦しみや不安の中にあっても、どこかで安心感ややすらぎといった気持ちを、お母様は感じてらしたのではないでしょうか。

自力では動けなくなっていたお母様、ベッドで向きを変えてもらった時、静かに息を引き取られたそうです。